住宅の設計において、階段の「蹴込(けこみ)」は重要な要素のひとつです。
本記事では、蹴込の役割やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
一級建築士の私が階段の蹴込について解説します!
蹴込(けこみ)とは
蹴込(けこみ)とは、階段の踏面(ふみづら)が蹴込板(けこみいた)から出ている部分を指します。
一般的に3cm程度(30mm以下)出ていることが多いです。
- 踏面:足を載せる板(段板)
- 蹴込板:階段の垂直面

住宅設計では、この蹴込があることで安全性や歩きやすさが向上すると言われています。
蹴込がない階段もある
鉄筋コンクリート造の階段では、蹴込はありません。
スーパーやデパートの階段を思い出してみて下さい。

またエスカレーターも蹴込はないですね。

蹴込があるのは、主に木造の住宅です。
また、鉄筋コンクリート造でも意図的に蹴込を設けるケースもありますが、それほど一般的ではありません。
デザイン性と安全性を兼ね備えた階段を作るために、以下のアイテムもおすすめです。
🔦 – 夜間の視認性を向上し、つまずきを防止。
蹴込が住宅の階段に必要な理由とは
蹴込がない階段ですが、木造でも作れます。

上の画像のように、作ること自体は不可能ではありません。
むしろ、スタイリッシュでこっちの方がいい!なんて声もあります。
インスタでもたびたびアップされているのを見ます。
それでは、なぜ住宅の階段に蹴込があるのでしょうか。
蹴込がある場合とない場合の図解
次の画像を見て下さい。
左が蹴込がある階段で、右は蹴込がない階段を、人体モデルが登ろうとしています。

蹴込があるほうが、段の先(段鼻といいます)が目立つので、視認性が高いですね。
蹴込がない商業施設などの階段では、すべり止めの金物に目立つ色を採用することで対処しています。

住宅の階段に戻りまして、足元の拡大をしてみます。
上の足のかかとの位置に注目。

同じ位置にかかとが着地していますが、蹴込があるとかかとの後ろに余裕があります。
低い方の足も、蹴込があるとつま先に遊びの空間ができるため、蹴込板に足をぶつけにくくなります。
授業で学んだことですが、蹴込があると足首の角度調整がしやすく、スムーズに歩行できます。
蹴込のメリット・デメリット
蹴込のメリットは次のようにまとめられます。
- 足元にゆとりが生まれ、上りやすい
- 段鼻がはっきり見えるので視認性が高まる
- はだしや靴下でも滑りにくくなる
- 安全性が向上する
住宅では靴を脱いで階段を上ることが多いため、滑りやすい靴下を履いた状態でも安心して使える点が大きなメリットです。
靴下は靴よりも摩擦が小さいので、すべりやすいため、より安全性に気を使いたいですね。
わが家は小さい子を育てている家庭なので、蹴込のないデザインも捨てがたかったのですが、結果蹴込があって良かったなと思っています。
デメリット
- 段の先が出すぎるとつまずきやすい
- デザイン的にシンプルさが損なわれる
安全面を考慮して、蹴込は30mm以下、特に高齢者がいる家庭では25mm程度に設計するのが望ましいとされています。
まとめ
階段は家の中でも事故が起こりやすい場所のひとつ。安全性を考えると、住宅の階段には蹴込を設けるのが一般的です。
我が家も蹴込のないデザインに惹かれましたが、結果として蹴込があって良かったと感じています。お子さんがいる家庭や、安全性を重視したい場合には、蹴込のある階段をおすすめします。
このように住まいづくりの参考になる本として「住まいの解剖図鑑」をおすすめします。
これから家を建てる方も、建築を学ぶ方にも、きっと参考になりますよ。
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